●俺様のNY行動記録 at 10th/Dec.【中編】

「そば日本」をあとにして、心地よい霧雨のなか8人全員で歩いて5分の俺様のアパートへ向かう。アイリッシュパブに行く前に荷物を置いておくためだ。予定外のことで部屋の中は散らかったままだけど、荷物を置くだけだし、かまやしない。全員の快適さに比べたらくだらない自意識など小さなことに過ぎないのは当たり前だ。荷物をヒーターの吹き出し口の上などに並べ終えたあと、アパートのコンシェルジェに、近くに良いアイリッシュパブがないかと聞いてみる。なぜかドアマンと相談し、7thアベニューを歩いて2分上がったところに左手にあったはずです、などと答える。その答え方の自信のなさと、そもそもカジュアルでなければならないアイリッシュパブが、大通りである7th沿いにある、と言う時点で信頼のおける情報ではなかったが、近いんだから見に行ってみるか、てな感じで近づいてみるとやっぱり単なる小洒落たカフェレストランだった。まぁそんなところだろうな。しかし、確信のもてない状況に対してはセカンドオプションを用意しておくのが投資家の習性である。俺様は予定通り、30メートルバックしたシェラトン・マンハッタンのエントランスで7人を待たせホテルの中に入っていく。そして、ええ、ええ、もちろん俺はここに泊まっていますよ、つうか、なんで今回はこんな普通のホテルにしちゃったんだろ俺様は、みたいな堂々とした態度で、コンシェルジェカウンターに近づき、お勧めのアイリッシュパブの場所を聞く。つうか、アイリッシュパブのことを聞くのに、シェラトンホテルほど格の適したホテルもないと思う。まさかピエールやペニンシュラのコンシェルジェにアイリッシュパブの場所を聞くわけにはいかない。案の定、2ブロック下がった49丁目のところにある、ほどよいアイリッシュパブを紹介してくれた。7thから10メートル入っただけの所、つまりタイムズスクエアから歩いて5分というところなのに、ドリンク三杯頼んで12ドル(チップ込みで15ドル)という気軽さだ。中の雰囲気は90パーセントの席が埋まっているというちょうど良い混み具合で、各種スポーツを見るための5枚のプラズマテレビがバーテンの上に掛けられているところや、エールをふくめた各種ビールを楽しむことができる15種類以上の生ビールサーバーなど、完璧にイメージ通りの体裁を整えている。でかい声で勢いよく注文する必要はもちろんあるが、バーマンの仕事が誠実で手堅いところも好感が持てる。ここで俺たちは、2時半から6時半までの4時間を楽しく過ごした。会計は、注文ごとに支払うアイリッシュパブだから、もちろん各人がそれぞれに払ったに決まっている。俺様は、エディンバラで味を覚えた、エールを中心に楽しんだ。過去など無いんだ、という視点がある。過去と未来など、振り子時計の振り子のようなもので、最下点を中心に「現在という振り子」が右(未来)や左(過去)に触れてはいるものの結局それはすべからく現在なんだと。時間が数直線的ではない、ということにおいてはわずかに同意できるが、これでは唯心論に偏りすぎていて工学的な視点(唯物論)が黙殺されており、美しくないと俺は思う。美とはすなわち、相反するものが同時存在する世界の双方向性を描き切れてこそ成り立つ高次元のバランスそのものだ。均整の取れたやじろべえを想像すると分かりやすい。ま、それはともかく、瞬間的に過ぎてしまったそれの四時間の厚みを今では感じることはできないけれど、「変わって欲しくない過去」として俺の内部に組み込まれたのは確かなことだ。俺は、変えてしまいたい過去、ではなく、変わって欲しくない過去、を少しでも多く蓄積しながら、俺自身の変化を形作っていきたいと思っている。

さぁ、6時半だ。俺たちはアイリッシュパブをあとにして、歩いて5分のワイナリーへと向かう。8時から始まる、ローマ人カップルによる手作りイタリア料理ディナーに全員が招待されているからだ。手みやげのワインを買う必要がある。まだ降り続ける霧雨の中、軽く酔いを覚ましながら俺たちはそこへ向かう。体力も時間もまだまだあるぜ、この野郎!と言う感じだったが、書いている現在の俺様が疲れてきたので、「NY行動記録 at 10th/Dec.【後編】」はあっさりと【中編】に題名を変えることにして、一旦ビールを飲むのであった。ビールを飲みながら、テレビとDVDを立て続けにみて、リフレッシュしてからまた書くことにする。つうか、ニューヨークは現在4:23AM。模範的な休日を送っている俺様が今ここにいる。