吉田都を見るためだけにロンドンを往復してきた。

kemurin012006-12-30


2時からのマチネだったから早朝に出発し日帰りでパリ・ロンドンを往復する予定だったんだけど、20:15ヒースロー発のエールフランスが強風のためキャンセルになってしまって、強制的にエアポートホテルで一泊することになった。そんな笑い話があったものの、夢にまで見た吉田都主演のロイヤルバレエ「クルミ割り人形」は、想像通りに素晴らしかった。

この演目を生で見るのは正に夢だった。二年前の同時期、ニューヨークで見たニューヨーク・シティ・バレエの「クルミ割り人形」に強く感動した俺様は、その感動を反芻したくて数日後タイムズスクエアのヴァージンレコードで3種類のDVDを買った。その中の一枚にロイヤルバレエの盤があり、その中に図らずも日本人プリンシパル吉田都がいた。好きなだけでバレエに詳しくない俺様は始め、よりによって主演のシュガー・プラム・フェアリーが何故、求めてもいない日本人なのかとがっかりするものの、そのネガティブな視線を粉々に破壊する「MIYAKO YOSHIDA」の踊りに忽ち魅了される。それから何度も繰り返し見る。音楽と全くズレのない彼女の驚異的なリズム感に驚愕し、胴体から流れるように後を付いてくる腕の動きの美しさの際限なきことに、何度も涙を流す。1ヶ月後、ワイフがニューヨークにやってきてそのDVDを見て同じように感動し、「ロンドンに彼女のバレエを見に行こう」と二人で決断する。その更に1ヶ月後、成田経由で地球を2/3周してロンドンの舞台に満場の拍手のなか彼女が出てきたときには、それまではその実存さえ信じちゃいなかった意思の力の力強さに、体が痺れるような非現実感を感じたものだけど、演目は「しつけの悪い娘」だった。それ以降「火の鳥」、「ジゼル」と彼女の踊りをロイヤルで見て、その全てに想像以上の満足感を感じたのだけれど、夢はやはり、「クルミ割り人形」だったのだ。

それがついに叶ったのだ。二年前DVDで見たそのままの映像が目の前で展開する。泣いた。泣きましたよ、この野郎。DVDと現実、二年前と今この瞬間、ニューヨークとロンドン。その日俺達は、あらゆる時空的障壁を突破した。

ただ、終わってみると、その突破した時間は瞬時に過去に流された。それに厚みがあったかどうかさえ今は分からない。しかし天才投資家様の俺様は、用意周到に1/3の同じ演目を抑えてある。今は、あのらせん的時空の波動エネルギーが、再び未来から俺様に向けて来たりつつあることに、時めきを感じている。