★アポロシアターに行ってきた★

昨日、アポロシアターに行ってきた。名前も聞いたことがないという人は多くないとは思うが、ハーレムにあるソウルミュージックの殿堂である。ここでは、毎週水曜日に「アマチュアナイト」を開催していて、プロを夢見る素人達が観客のブーイングに晒されながら彼らなりの夢の実現を目指すのだ。
 
まぁ一度くらいは行っておこうか、という軽いノリで見に行ったのだが、これがなかなか面白かった。よく日本人のインプレッションなどでは「みんな素人とはいえ信じられないほど上手い」というバカとしか思えない無知な感想が散見されるが、クラシックを聴く俺たちにとっては、そのほとんどがサルの瞬間芸だ。クラシックと比較してどないすんねん、という人生を浪費している呑気な人間特有の疑問ももしかしたらあるかも知れないが、俺様が言っているのは、どちらも表現である限り、クオリティに対する批判は逃れられないということだ。そういう至極まともな視点(聴点?)から聴けば、優勝したセミプロだと思われる女の子以外は、今後の可能性の「か」の字も感じることのできないカスの集まりに過ぎなかった。
 
それでも面白かったのは何故か。当然、この「シロウトのど自慢大会」を支える司会者やバックバンドやスタッフが一流だからだ。冷蔵庫に残ったどんな食材でも美味しい料理にしてみまっせ、というお昼のバラエティ。これが現在の「アマチュアナイト」の姿だ。実際、マイケル・ジャクソンボビー・ブラウンや数々の大物がここから排出されたが、近年はそういう実績がないことが、このショーの建前の形骸化とスターダムへのルート変更が既に過去のものになっているということを物語っているように思う。だから、模範的な観客としては、そういうしょっぱい事実に1ミリも気付いていないふりをして、やんややんやと楽しんであげる、という暗黙の上に求められた姿勢を完遂するのだ。
 
特に面白かったのが、本編の始まりの前に行われる「ソウルトレイン」。これは観客が受動的観客なのではなくてここでは能動的参加者であることを念押すことを目的として開催される観客10人ほどをステージに招いての即興ダンスコンテスト。どうやら「ジャパニーズ?エニィジャパニーズ?」と探していたから、日本人は毎回一人選出されるようだ。今回のわれわれの晴れなる日本人代表選手は、英語も全く分からない20〜22歳程度の大人しそうな女の子。場違いオーラを遺憾なく発揮している。そのダンスはみんなびっくりの聖子ちゃんダンス(俺様が今勝手に作った言葉。アイドル時代の松田聖子のようなリズムを取るだけの蟹のような動き)だった。誇らしいことこの上ない。でも、楽しかった。大いに爆笑した。なんというか、こういう点でも、どこか冷めた視線を織り込みながらそれでも爆笑する、というのが「アマチュアナイト」の基本線なのだなぁと思った。
 
いや、楽しいよ。実際。この前の日曜日に行ってきた教会のゴスペルよりまじお勧め。