★その絶望が、不燃性の時間を燃焼させることになる

ワイフがニューヨークでの16日間の滞在を終え日本に帰っていった。といっても日本で12日間ほど仕事をしてから此方に帰ってきてもう一度18日間ほど滞在するのだけど。
 
彼女には不思議な魅力があるらしく、今朝の出発のときスーツケースをイエローキャブに載せるのを手伝ってくれたアパートメントのコンシアージュが、ふたりで彼女の車を見送った後、「わたしは彼女のことが好きでした」と残念そうにし、いや12日後には帰ってくるよというと、安心していた。
 
「夫婦がそれぞれのやりたいことがあるから時々別の国で離れて暮らす」と言ったときの反応は日本と欧米でほぼ正反対だ。欧米(パリやミラノやニューヨークなどの大都市での経験しかないので田舎ではもう少し違った反応なのかも知れないが)では、「あらそう、素敵ね」というようにほとんど驚きなく受け止められるのだが、日本人には、特におばさんを中心に、凄く驚かれてしまう。理由を聞かれるから、「お互いの人生をなるべくスポイルしたくないんです。というか、相手が最大限に能力を発揮できるように協力した方がストレスも少ないし、大局的に見ればそうした方が自分にもより大きな利益がもたらされるでしょう?」と正直に説明しても、ぽっかーん、とされるのが関の山だ。それだけならまだ良いのだが、たいていの場合「優雅で良いですね」などという嫌みを付け加えられるのだから、やれやれと気が重くなってしまう。身も蓋もないことばかりを書くこのBLOGの性質上、読者の大半は現状に危機感を持った、将来に選択肢の幅のある、世間一般で言うところの「若者」がほとんどであるけれども、いま日本に住んでいたとしてもぜひこういう下らない「おばさん文化」にエフェクトされずに将来をイメージして欲しいものだ。
 
さて、今日の全日空NH009便は1時間半ほど出発が遅れたけれど、ウェブサイトの情報によると成田に先ほど到着したようだ。機材変更で、ファーストクラスがいつものソロシートから隣に人がいる旧型のシートに変更になったと、いかにも女の子らしいお怒りの電話がJFKからあったけれど、無事に付いたようでとにかく良かった。
 
しかしこういう夫婦関係も、何時かどちらかが死ぬことによって必ず終わりを迎える。それだけは忘れないでいよう。その絶望が、不燃性の時間を燃焼させることになるのだから。
 
 



 
追伸:最近のコメントにさらさらとレスしておきました。