★今日、Fifth Avenueで常識を覆す凄いホームレスを見た。

今日、55丁目bet5th&6thのイタリアンレストランで夜飯を食べた後、クリスマスツリーの撤去も近いからロックフェラーセンターに行って写真でも撮っておこうか、などとワイフに言いながら五番街を南に向かって歩いていたら、53丁目あたりで、今まで見たことのない凄いホームレスを見た。
 
彼は、ギリシャ人に髭を生やしたような哲学者的な面持ちで、体型は身長が高いわりに無駄な脂肪の一切ない、正にバスケットボールプレイヤーのようなひょろ長い体型。それでありながら、この寒空の下、赤茶色の一枚の布に穴を空けて顔を通し腰の辺りをひもで縛っただけという完全ノースリーブの、まるで毒杯をあおって死ぬ直前のソクラテスやエルグレコの絵に描かれているキリストを彷彿とさせるような、つまり何処までもストイックかつ完璧な服装で、他のなんの変哲もないホームレスとは全く一線を画した存在感を放ちながら、そして得も言われぬ不思議な清潔感を帯びながら、さわれば数秒で指がかじかんでしまうような鉄製の柵を背にして其処にいた。もちろん目は全く死んではいない。つうか、そもそも他のホームレスと比較しようにも、この時期どれだけ沢山の衣服を纏っていたとしても、マンハッタンの冬の夜空を二日以上生き延びることのできるホームレスなど生物学的に存在し得ない。それなのに、彼の格好はぺらぺらの布一枚の完全ノースリーブで普通に生き延びていた。まさしく存在自体がアンビリーバボー。
 
それだけでも、記憶に残るすげえヤツなのに、あいつの持っていたサインがまたディープインパクトだった。普通、模範的な優良ホームレスならそこには、「I'm hungry」とか「Help me」とか書いていて当たり前のはずだ。つうか、それが彼ら一流の身だしなみというかもっと言えば当然の「お手前」だと俺は思う。それなのにアイツときたら、そこにはなんと世界のみなさまの幸福を祈った「HAPPY  NEW  YEAR」 これにはさすがの俺様もぶっ飛んだ。アイツは寒風吹きすさぶ夜空の下、ぺら布一枚しか所持していないというのに、それでも自分が一方的に求めるのではなく、その前に先ず他人に向けて「HAPPY  NEW  YEAR」の祈りのプレゼント。あり得ない、はっきりいってあり得ない。
 
もちろん俺は、鳩が豆鉄砲を食ったような顔で百メートルくらい其処を通り過ぎた後、ワイフと顔を見合わせたことを解禁日として、笑った。腹の底から笑った。つうか遠慮無く笑っても問題ないほど異次元の存在だったはずだ。しかしその笑いが落ち着いた後、俺様は未だに彼の存在を消化し切れずにいる。記憶に幾ばくかの傷を付けられた感じだ。アイツはマジで一体何物だったんだろう。ほんとうに奇跡の人か、あるいは場所柄、ペニンシュラに宿泊しながらホームレス業を兼業しながら巨万の富をなし続ける超大物ビジネスマンに違いない。いや、まじ、そうであって欲しい。頼むから。