●NY俺様行動記録 at 14th/Nov.

今日は五番街近辺に買い物に出掛けただけの一日だったが、買い物はそれだけで気分転換にもなるし、なにより新しい服を纏(まと)うというのは、大げさに聞こえるかも知れないが、昨日までの自分との決別を図るという意味でも凄く楽しいぜ、この野郎!!変わる事のない「自分の中心にある何か」、なんてありはしないんだからな。

先ず、エンポリオアルマーニ(58th マディソンave.)まで散歩代わりに歩いていく。普段使いのトロゥザーズを買うためだ。散歩代わりといっても、10分そこそこしか掛かりゃしない。これじゃ日頃の運動不足の足しにもならない。コンドミニアムの立地条件が良すぎるのも考え物だ、と最近思う。ニューヨークというやつは、とにかく便利に生活できるようになっていて、たとえばレストランからのデリバリーサービスも物凄く充実しているから、ミッドタウンなどに住んでいると、本当に深刻な運動不足になってしまう。俺様のようなネットトレーダーがその気になれば、昔のハワード・ヒューズのようにほとんど部屋を出ずに生活し続けるという事も充分可能だと思う。そんな可能性をあれこれ考えながら歩いていたら、世界広しといえどもアメリカにしか生息しない、すなわちアメリカ名物の巨デブ家族三人組とすれ違い、「こりゃあかん、たまにはレジデンツ用のジムを利用しなければ俺様もあっという間にあっち行きだ」と恐怖する。

エンポリオアルマーニでは、無事にタイプの違う二本のトロゥザーズをゲットする。お直し係のアンナとセーヌ川の夜景の美しさについて少しだけ盛り上がる。英語がヒスパニック訛りだったので聞き取りにくいと思っていたら、チリ出身との事だった。細い国から来たんだな、と訳の分からない事を思うが、所詮実際に行った事のない国に対するイメージなんて、多かれ少なかれそんな程度のものだ。実体験はイメージを必ず裏切る。どれくらいで直るのか聞いたら、一週間掛かるという。長えな、おい、と思っていたら、すかさず「いま立て込んでいる時期ですので。それより早くをご希望でしたらラッシュチャージがかかります」と言う。この辺が、着心地ももちろんそうだが、ファーストラインのジョルジオ・アルマーニとの違いだなと思う。ファーストラインなら、そういうことをつべこべ言わず、クライアントが望めば翌日には完璧に直してホテルやアパートまでデリバリーしてくるからだ。もちろん無償で。

そのまま、マディソンアベニューをアップタウンの方へ向かう。今年9月、F1イタリアグランプリとサッカーのACミラン戦を観るためにミラノに行ったのだが、その時モンテナポレオーネ通りのバレンチノで見つけたベルトを買うためだ。買うかどうか少し迷っていたのだが、ここに来てようやくその気になったのだ。バレンチノでは、98.8%ゲイだろうと思われるものすごく女性的な黒人店員ロベルトが対応してくれた。めでたく狙いのものを見つけた後、少し彼と話をする。ニューヨークにはビジネスのためかと聞くから、いやそうではない、とわたしの事情を説明し、冬の期間だけニューヨークにいて後はパリだ、というと、「パリ?あなたパリに住んでたの?ああ〜ん、あたしも大好きよ〜」と山咲トオルちゃんなみのくねくね感でヴィヴィッドに反応。俺様も負けてはいられずにパリへの愛情を吐露し、俺様以外に客のいないだだっ広い店内で、大いに盛り上がる。ドアマンにはさぞ気持ちの悪い状況だっただろうけど、もちろんそんなことは知ったこっちゃない。そんじゃ、また来るよ、といって握手を交わしたときには、もうファーストネームで呼び合う仲になっていた。ただ、誤解のないように言っておくが、残念ながら俺様はゲイではない。しかしゲイのヤツらは好きだ。たいていの場合ファッショナブルで清潔感があるし、なにより他人との距離感の計り方が慎重だからだ。プライベートの領域にずかずか土足で入り込んでくることがない。そう言う安心感と繊細さが俺は好きだ。

最後に、泣く子も黙る五番街の超高級デパートBERGDORF GOODMANに行ってみた。「服はブティックで買う派」の俺様としては、デパートなど少し馬鹿にしていたが、ここだけは違った。地上階に「ヴァン・クリーフ&アーペル」が入っていることでも異質な感じがしていたが、店内の雰囲気も、いままで見た世界中のどのデパートよりも別格に高級感に満ちあふれ、そして美しかった。そこを歩いているだけで幸せな気分になれた。しかし、彼女やワイフや愛人をあんなところには連れて行かない方が良い。そんな事をすれば、ほとんどの男はあっという間にクレジットカードのリミットを使い切ってしまうからだ。