★モナコというインチキ国家(前編)

昨日は「AOL TIME WARNER CENTER」を見てきたのだが、今回はそれについてつらつらと書くつもりはない。ここ数日、「The Trump World Tower at United Nations Plaza」を含め、同じようなモチーフで書いてきたし、マンダリン・オリエンタルと一体化していて、そこのジムやプールなどを無料で使えるという事以外は、別段特筆するべき事がなかったからだ。ホテルとファシリティーを共有するというのは、個人の好みにもよるだろうが、その分プライバシーが損なわれ、本当の金持ちは敬遠するだろうなとも思われた。

ただ、その立地条件には少しだけ魅力が感じられた。コロンバスサークル近辺というのは、ミッドタウンよりもアッパーウェストの雰囲気が強く感じられ、ジョンレノンが好んだダコタハウスが近くにあることからも分かるように、上流階級の趣が滲み(にじみ)出ている。こういう一種独特のシルキーな雰囲気というのは、単にハードウエアを整えれば得られるものではなく、そのエリアに住む人間達のオーラがハードウエアのひとつひとつに染みつく事によってもたらされる、得難いものだ。飛行機のファーストクラスもこれと同じ。ファーストクラスがビジネスクラスと決定的に違うもの、それは、KRUGドンペリが飲めるとか、ベルーガやゴールデン・オシェトラのキャビアが食べられるとか、キャビンアテンダントの数がビジネスクラスだとパッセンジャー15人に対して一人なのがファーストクラスだと4人に一人だからサービスがきめ細かいとか、キャビンアテンダントを上品に食事に誘えばかなりの確率で成功するとか、そんなことではない。ファーストクラスがファーストクラスたり得るのは、その乗客ひとりひとりが発するオーラが、その空間全体を包み込むからだ。まぁ、といっても最近は、マイレージやなんやらで本来ファーストクラスに乗るはずのない層もずいぶん乗るようになったから、その割合のいかんによってはそのシルキーな雰囲気もかなりスポイルされたりするのだが。

そんなことを考えていたら、モナコの事を思い出した。モナコといえば、コートダジュール、フランスリビエラの東の端、イタリアとの国境にほど近いところにぽつんとある小さな独立国家。カジノやF1グランプリがよく知られているが、なによりタックスヘイヴンにしていることにより、ヨーロッパ中の金持ちがアホほど8時だよ全員集合していることで有名だ。女の子だったらだれでも憧れていて、「モナコに行こうぜ、きみのためにエルミタージュを一週間押さえたんだ」といえば、たいていの女の子が有給休暇の残り日数を数えちゃう国、それがモナコだ。

しかしモナコという国には、一度行ってみれば分かるが、かなりのインチキが存在する。ただ、そのインチキは、金もないのに単なる憧れでやってきたほとんどのツーリストには分からないように上手に隠蔽されているからちょっと面白いのだが、俺様のような小金持ちには二日目ともなればすぐに見破られるような三文芝居だし、なによりモナコという国家が内に秘めている暴力性が、こういう小金持ちをターゲットにして遺憾なく発揮されるから充分に注意が必要だ。以下にその具体例の一部を書こうと思っているが、あまりにも長くなってきたので、続きはまた明日、今日はその前編とさせていただこう。