★35メートルの決定的な差異

じつは明日、「The Trump World Tower at United Nations Plaza」と双璧をなす、「AOL TIME WARNER CENTER」を見に行く。先日から連続しての出撃となるのだが、俺様が子どもの頃その小さな胸に描いていた、マンハッタンの高層ビルにオフィスを持って、金髪の美人秘書を雇い、俺様も成功したんだなとしみじみと窓際に立ちながら、右手にはブランディー、上半身は完全オーダーメイドのテーラードスーツとネクタイ、下半身は、いつも右にしまわれますか、それとも左にしまわれますか?えっと、僕は右利きですから左にしまいます、といいながら作ったテーラードのズボンもどこへやら、パンツも下ろされそこには美人秘書の長い髪、という無邪気な夢を、ここらでいっちょう実現してやるか!この野郎!ぐふふふ、と企んでいるわけではもちろんない。 この夢は、パリに住んだとき、完全に死んだ。俺の中で何かが終わり、別人になった瞬間だった。パリは、この俺様に、それほどまでの強烈な傷を与えた街なのだ。

そういうわけでアパルトマンを持つならば、ひとつ目は当然パリ。しかもパリなら16区の優良物件で、2億あれば買える。であるならばなぜそんなに精力的にニューヨークのアパートを見に行くのだ、ということになるだろうが、それはもちろん、イメージしておくためだ。そう遠くない将来、パリのアパルトマンを手に入れるのであるが、その後、やっぱりニューヨークにも一つ欲しいな、ということにうっかりなるかもしれない。俺様という男は、喪失感を新たなる欲望でもってしか埋めることのできない、そういう男だ。それは自分が一番よく知っている。だからこそ、一度旅行に行ったらまたすぐに出掛けてしまうのだが、そんなことはさておき、来るべき喪失感に備えて、その喪失感からすぐさま自由になるための情報を整え、なるべくたくさんの脱出口の在処をさぐり、そこに至るための鍵をいくつか用意しておくのだ。

その一連の作業をイメージという。俺様は、イメージによってここまで来た。俺様が数年前、「仕事を辞めて、インターネットを使って株の売買しながら、その売買益で世界中を旅行しながら生きていく」と言ったとき、ワイフを除き、周りのほとんどの人間はその実現可能性を認めなかった。しかし現に今、俺はそれをふつうに実現している。飛行機の登場クラスも、ビジネスとエコノミー混じりだったのが、ビジネスのみになり、最近ではファーストに乗る事が多くなった。彼らは依然、自分より頭の悪い上司に仕えながら、たまの海外旅行はパックツアーのプリズナークラス(エコノミークラスの事ね)。俺様は、エコノミークラス症候群の危険にされされながら長距離線で腹を空かせるプリズナークラスの35メートル前方で、KRUGを飲みながらキャビアを食べるのだ。

では、彼らと俺様の決定的な違いは何なのか?それはひとえに、情報収集力とその分析力にほかならない。それがゆえに、俺様は今日も情報収集に余念がないのだ。これ以上書くと、蛇足になるので嫌なのだが、プリズナークラスの奴らは、頭の良し悪しをここで持ち出したりするからどうしようもない。彼らのやり口はいつもそれだ。そんなものは、この話と何の関係もない。しかしながら彼らは、怠惰な自分の現状を肯定するために、異次元の理由をもって反論する。彼らのやり方はいつもそれだ。カテゴリーエラー、この言葉の意味を彼らは知らない。